以前私が担当した相続税の案件でのことです。
その時の被相続人(亡くなられた方)はお父様で、お母様はすでに亡くなられていました。
その方の長男は地元にいてお父様の自宅のすぐお隣で、次男は東京で離れて暮らしています。
このご家族は、お父様も、長男、次男もそろって公務員という実直なご職業に就かれていました。
相続税の申告に至るまでは、戸籍謄本から始まって残高証明他、あらゆる資料をお預かりしないと進めることができません。税理士が行う作業に並行して、相続人の方は市役所へ行ったり、銀行などの金融機関へ行ったりと、結構忙しいのです。
このご家族の場合は、相続人であるお二人とも公務員のため、また次男は離れているため、日中動くことができないので、資料収集などの手続き関係は、長男の妻(お嫁さん)が代理で私とやりとりしていただいていました。
最初のころは、何の問題もなく粛々と進んでいくと思われました・・・が、
ある程度の財産の概要ができあがったので、そのご説明と遺産分割をどうするかの話合いの席で、そのお嫁さんの態度が急変したのです。(もともとお嫁さんは相続人ではないためお呼びしていなかったのですが・・・)
自分は義理のお父様(今回の被相続人)の介護、病院の付き添い、その他もろもろ尽くしてきました・・・と訴え始められたのです。不動産は長男、それ以外の金融資産は兄弟で1/2ずつという分割案(私が住む当地での相続はそんな分割が多いです)が納得がいかないと・・・
そもそも私たち税理士は相続税の申告がメインの業務でして、分割案は、相続人の意思を確認の上進めるのですが、ある程度のたたき台を提案はします。
案の定、そのお嫁さんと、次男との言い争いとなってしまいました。(長男はなぜかダンマリでした・・・)
2019年の8月現在、民法が改正されてお嫁さんの介護の努力も多少は考慮されるようにはなりましたが、お嫁さんは相続人ではありませんから、当時の法律では、介護したからと言って遺産を主張できる立場ではないのです。
話をお聞きすると、確かにお嫁さんは、いろいろご苦労はされたようなのですが、 結果的にこのお嫁さんの主張はとおらず、金融資産1/2ずつ、でまとまることとなりました。
兄弟ともに現状、経済的には何の問題ないようでも、遺産の分割協議の席に配偶者を同席させて何か言われてしまうと、感情が先走ってしまいこじれることになりそうです。